コラム

ドラッグに堕ちていく息子を信じ続けた8年間。 ジョン・レノンの名曲が彩る、愛と再生の物語。

映画『Beautiful Boy』

『君の名前で僕を呼んで』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ世界中の注目の的となり、今ハリウッドで最も期待の高まる大人気俳優ティモシー・シャラメ主演の最新作は、8年という長い年月をかけてドラッグ依存症を克服した青年と彼を支え続けた家族の実話を基にした物語。

優等生でスポーツ万能、将来を期待されていたニック(ティモシー・シャラメ)は義理の母親や幼い弟たちにとって”いい息子・いい兄”であることがいつも求められていた。
そんな日々の中でつい手を出してしまったドラッグ。
断ち切ろうと思いながらもドラッグの誘惑に勝てない自分を恥じる気持ちからニックは益々ドラッグにのめり込んでいく…。

そんなニックの更正を信じ続け、大きな愛と献身で包み込む父親デヴィット(スティーヴ・カレル)との家族の愛と再生を描く。

この映画のタイトルは、1980年に発表されたジョン・レノンとオノ・ヨーコの最後のアルバム『ダブル・ファンタジー』の収録曲『ビューティーフル・ボーイ』を引用したもので劇中で流れるこの曲は息子を思う父の心情と重なり心に深い印象を与えてくれる。

父親を演じたスティーヴ・カレルはこの役を受けることに対して少し二の足を踏んだと語る一方で息子役のティモシー・シャラメはどうしてもこの役をやりたくてオーディションを受けたという。

今、旬の俳優ティモシーが演じるドラッグに堕ちていく息子を時には優しく時には厳しく見守り続ける父親を見事に演じたスティーヴ・カレルにグッと心を掴まれた。
それは、ただ見守り続けるのではなく、その中に何度裏切られても必ず息子は立ち直るという強い気持ちと目には見えない愛情がいっぱい込めらていることが伝わって来るからだ。
これは決して容易い事ではない。
愛すればこそ出来るワザなのだと思うと自然に涙がこぼれた。

日本でも”ドラッグ”が世間を騒がせている今、薬物からの脱退の難しさを改めて感じさせてくれるこの映画は今最も見るべき作品と言えるだろう。

『ビューティフル・ボーイ』
4月12日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ、朝日新聞社
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辻 美香

シネマナビゲーター
1972年8月15日生。
長崎を中心に映画コメンテイター、映画ライターとしてラジオ、テレビ、講座講師等で活動。
ラジオパーソナリティーエフエム諫早『美香のFlower Cinema』(毎週金19:30~)

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