映画『アルキメデスの大戦』
100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者が海軍を相手に数学で戦争を止めようと立ち向かう物語。
彼の名前は櫂直(菅田将暉)。
数学と美をこよなく愛し、常に巻き尺を持ち歩き色々なものを計ってまわる。その上軍隊が大嫌いな変わり者。
ひょんな事から出会った山本五十六(舘ひろし)に数学能力を見初められ、戦争の引き金になり得る巨大戦艦の建造計画を止めさせる為に力を貸して欲しいと頼まれる。軍人嫌いな櫂は頑なに断るものの、日本の未来の危機を感じ、自分に与えられた任務を引き受ける。しかしそこには帝国海軍内の大きな壁が立ちふさがるのだった。
空中を自在に飛び回る戦闘機から降り注ぐ銃弾…。
真っ黒な噴煙を上げながら巨大な機体はもろともに破壊され広大な海の中へと姿を消して行く…。
VFXで甦らせた戦艦大和の壮絶な沈没シーンはまるで本物を見ているかのようでその迫力にスクリーンに釘付けになった。
もうひとつの見せ場でもある大会議のシーン。
山本五十六を演じた舘ひろしさんや橋爪功さん等海軍上層部役のベテラン俳優陣が大舌戦を繰り広げる中で、菅田将暉さん演じる櫂直が「数学」でぶつかっていく熱い戦いぶりは、観ている私達をも巻き込むほど圧倒的!
2013年の大ヒット映画『永遠の0』に続いて第二次世界大戦を舞台にした映画に再び挑む山崎貴監督。山崎監督は原作「アルキメデスの大戦」に出会ったとき「これぞ映画だ!」と興奮し、そしてこの戦艦「大和」が抱えていた問題を考えることは今の日本という国を考えることに繋がるのではないかと感じたと語る。
余談ではありますが、山崎貴監督の戦争を舞台にした『永遠の0』『アルキメデスの大戦』の両作品で印象的だったのはチラシやポスターの”青”を使った特徴のある背景。
同じ”青”であっても、これは見る人によって違う印象になるに違いない。
“晴れ渡る青空”と思う人もいれば、”叶わなかった夢を抱いて散った若者たちの青春”の青と思う人もいるはずだ。
『永遠の0』の”青”も『アルキメデスの大戦』の”青”もそれは決して爽やかさではなく、私たちに何かを語りかけている。その”青”が私たちに深い印象を刻み、作品がいつまでも心に残るものになっていく。
それが私自身の中の山崎監督が描く戦争を舞台にした映画の第一印象だった。
「夏」というと楽しいことを思い浮かべる反面、原爆や終戦記念日等「戦争」という言葉も頭に浮かんでくる季節…。
『アルキメデスの大戦』はエンターテイメント映画として一級品に仕上がっているが、現代の私たちに語りかけるメッセージ性のある作品として、映画館の大きなスクリーンで迫力ある映像と一緒に楽しんで欲しいオススメの映画!
キャスト:
菅田将暉 柄本佑 浜辺美波
笑福亭鶴瓶/小林克也 小日向文世/國村隼 橋爪功
田中泯 舘ひろし
監督 脚本 VFX:山崎貴
原作:三田紀房『アルキメデスの大戦』(講談社「ヤングマガジン」連載)
(C)2019「アルキメデスの大戦」製作委員会
(C)三田紀房/講談社
公開日:2019年7月26日
公開情報:全国東宝系にてロードショー
公式サイト:http://archimedes-movie.jp/
シネマナビゲーター
1972年8月15日生。
長崎を中心に映画コメンテイター、映画ライターとしてラジオ、テレビ、講座講師等で活動。
ラジオパーソナリティーエフエム諫早『美香のFlower Cinema』(毎週金19:30~)